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2010年9月 5日(日) 04:28 JST

アルク高校教材編集部レポートVol.40
~授業力UPゼミ「“二兎は追える!”コミュニケーション能力育成と大学受験の両立」報告~

このコーナーでは、アルク高校教材編集部が拝見したユニークな英語授業の取り組みや、参加したセミナー・学会の概要をご紹介いたします。

去る5月23日(日)に弊社地下ホールにおいて、第3回「授業力UPゼミ」が開催されました。今回は『“二兎は追える!”コミュニケーション能力育成と大学受験の両立』をテーマに、神奈川大学外国語学部 准教授、久保野雅史先生にご講演いただきました。そのお話の内容をレポートし ます。

久保野先生は、21年間教鞭を執られた筑波大学附属駒場中・高校で、音読や暗唱、口頭練習を核とした授業で、 コミュニケーション能力の育成と大学受験の両立を実践してきたことで有名です。「コミュニケーションを重視した授業では、大学入試に対応できない」「逆に大学入試で結 果を出さなければならないのでコミュニケーションを重視した授業は意味がない」という考えが、高校 (特に進学校)においては、まだ根強くあります。しかし、コミュニケーション能力育成と大学入試の「二兎を追う」ことは、生徒・保護者の願いです。「二兎を追う」ために、どのような授業を行ってきたのか、今回の授業力UPゼミでは授業で実際に使用されたプリントや定期テスト・校内模試などの現物を示しながら、数々の工夫について具体的にお話しいただきました。

実際の校内模試から指導すべきことを考える

久保野先生の作成された校内模試には、出題内容が東京大学入試問題のどの大問に該当するかを示した表を掲載されています。(下図)



校内模試は「英語I」「英語Ⅱ」「英語Ⅲ」の3分冊になっています(ここでの「英語Ⅰ」などは、科目名とは無関係)。東京大学の入試問題は、内容は超難問と言うほどではないものの量がとても多いことで有名です。そのような問題をどのように攻略していくのか。まず参加された先生方が実際に校内模試を解いてみて、そしてその問題に対応できる力を付けさせるために指導すべきことを考えてみました。

当日使われた冊子は「英語Ⅰ」で、大問は、①100字要約、②段落整序、③リスニングでした。「この問題に対応できる力を付けるには、日常の授業でどういった指導が必要か」という視点で校内模試に取り組みました。受験生の目で解くのではなく、指導する立場から問題を分析し、必要な指導法を考えます。問題を解いた後に、4, 5名のグループでお互いの意見を交換し、それを基に、全体で意見発表を行いました。例を挙げてみます。

◆100字要約問題についての参加された方からのご意見
発表された先生のご意見は「勤務校では色々な学力レベルの生徒がおり、生徒の日本語の学力にも差がある。多くの生徒が日本語を理解する力が弱いため、英語の前に日本語の文章の内容を読み取ることができない生徒も多い。そのため『日本語の文章の要約』という演習を英語の要約問題演習と並行して行うのも良いと思う。ただし、その時間を確保するのは難しいので、家庭学習に取り入れ、授業の中では英語で、家庭学習では日本語で演習をさせてみてはどうか。」というご意見でした。

久保野先生からは「とばし読みのような速読は必要ありません。大切なのは、英語の語順に従って、word by word, line by lineに分速100語程度で素早く正確に読んで理解する能力を育てることです。母語(日本語)の読解速度を上げていくことが、英語を読む速度の向上にもつながると思います。」というコメントがありました。

◆久保野先生の指導法
それでは実際に久保野先生はどのように指導されていたのでしょうか。その指導法について解説していただきました。


「東京大学の100字要約の問題で、『80字~100字で要約せよ』という問題指示がありますが、その想定字数が意味することは何でしょうか?日本語の文は、簡潔に書いたつもりでも一文の長さが20~25文字程度になります。出題者は、要点が4個所だと考えているので、この文字数に設定したのでしょう。各項目について20~25文字で簡潔にまとめ、それをまとめれば約80~100文字となり、要約文が完成します。」

①重要なポイントだと思われる個所を「反復」「例示」などを省きながら箇条書きする。
②各ポイントの論理的なつながりを考えて、文章にまとめる。

「要約問題は格好を付けて長い文を書いてはいけない。簡潔にポイントをつくこと。やみくもに書き連ねて、設定字数が来たら終わり、という書き方は論外。」と言い切り、最初にポイントの箇条書きを作成する必要性を強調されていたそうです。

■リスニング指導について

リスニング指導は「テストと答え合わせ」に終始しがちです。聞けなかった個所が聞けるようになるために、学習方法を提示して授業中に体験させます。ただし、自分なりにやり方を見つけている生徒には特に強要はしなかったそうです。自分に合った学習方法かどうかは、生徒自身に 判断させるようにしたそうです。

東大入試の「レクチャー型」の問題の場合、推奨の手順は次のようなものです。


①問題の音声が流れる前にするべきこと:質問だけを読み、話の展開を予測する
②流れている最中にすること:問いに対する答えをメモする
③音声が終わった後にすること:選択肢とメモとのマッチング

①~③のようにはっきりと区切るのは、「聞き取りながら選択肢を読み分ける」というように、複数の作業を同時に行って混乱することを避けるためです。選択肢一つ一つの正誤判定をしながら聞き取る方法は推奨しません。リスニングの指導では、そのときに「やるべきこと」と「やってはいけないこと」を峻別して提示してあげることが大切なのです。

■音読指導について

最後に実際にされていた音読指導の内容をご紹介いただきました。

◆ハノン方式
定着させるための音読。やり方は以下の通り。授業で教科書のLesson 1を学んだ場合、

1日目:授業でLesson 1のsection 1を学習。家庭学習でsection1を音読
2日目:授業でLesson 1のsection 2を学習。家庭学習でsections 1 & 2を音読
3日目:授業でLesson 1のsection 3を学習。家庭学習でsections 1, 2, &3を音読

このような音読は、家庭学習のウォームアップとしてやるように指示をし、まず音読をしてから学習に入るスタイルを定着させてしまいます。日数が進むにつれて読む量が増えていきますが、日々の学習スタイルに組み込んでしまえば、それほど苦にすることなく生徒は取り組むそうです。そしてもう全部覚えた、暗唱までできるという生徒には、次は書かせる、すなわち暗写するよう指示をします。そして、間違えずにすらすらと書けるようになったら、もうそのページについては書かなくてもよしとします。ただ「たまには復習しないと忘れてしまうよ」と釘をさすことも忘れません。生徒にこの学習方式を習慣化させ音読練習を繰り返しさせると、授業での学習事項が驚くほど定着するそうです。

◆虫食い音読
この音読方法は、空所のあるテキストを音読する者です。久保野先生ご自身が勉強のために行っていた学習方法から考えついたそうです。鉛筆は持たず、空所に書き込みはさせません。瞬間的に判断して音声化する必要があるため、スピーキング力の育成につながるそうです。空所を色々とバリエーション持たせることで、弱点を補強して発信力を鍛えていきます。

=空所にする個所=
1.前置詞・接続詞
2.限定詞(冠詞・所有格等)
3.動詞:①原形を修正する ②適切な動詞を選択肢から選ぶ

入試問題にも、3.①②のようなタイプが出題されることは少なくありません。この音読練習は正確な発信力の育成を目指した者ですが、この音読練習によって教科書の本文をきちんと身に付け、空所部分にあたる部分を正確にアウトプットする訓練を日頃から行なうことで、結果として、入試問題にも対応できる力が付くそうです。「教科書の本文を言葉としてきちんと身に付け、使えるようにしておけば受験には十分対応できる」と先生はおっしゃいます。


今回の講義では、入試のシミュレーションである模試を実際に解いて、この問題に対応するために生徒に必要な力は何なのか、そしてその力を付けさせるための指導法や授業での取り組みを考えていただき、必要となる指導についてお話し頂きました。受験を入口とし、そこから逆算する形で「日常の授業をいかに改善するか」について、お話し頂きました。

「特別な受験対策をしなくても、授業で力を付けていけばコミュニケーション能力育成と受験は両立できる」と久保野先生はおっしゃいます。そのお言葉の通り、模試の作成から、力を付けさせるための授業法・指導法までアイデア満載で、大変参考になるお話しでした。久保野先生どうもありがとうございました。ご参加された先生にも様々なアイデア・工夫を参考にしていただき、今後の授業にお役立ていただきたいと思います。


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最終更新日: 2010年6月18日(金) 09:17 JST; 603 閲覧件数 印刷用画面