このコーナーでは、アルク高校教材編集部が拝見したユニークな英語授業の取り組みや、参加したセミナー・学会の概要をご紹介いたします。
去る5月23日(日)に弊社地下ホールにおいて、第3回「授業力UPゼミ」が開催されました。今回は『“二兎は追える!”コミュニケーション能力育成と大学受験の両立』をテーマに、神奈川大学外国語学部 准教授、久保野雅史先生にご講演いただきました。そのお話の内容をレポートし ます。
久保野先生は、21年間教鞭を執られた筑波大学附属駒場中・高校で、音読や暗唱、口頭練習を核とした授業で、 コミュニケーション能力の育成と大学受験の両立を実践してきたことで有名です。「コミュニケーションを重視した授業では、大学入試に対応できない」「逆に大学入試で結 果を出さなければならないのでコミュニケーションを重視した授業は意味がない」という考えが、高校 (特に進学校)においては、まだ根強くあります。しかし、コミュニケーション能力育成と大学入試の「二兎を追う」ことは、生徒・保護者の願いです。「二兎を追う」ために、どのような授業を行ってきたのか、今回の授業力UPゼミでは授業で実際に使用されたプリントや定期テスト・校内模試などの現物を示しながら、数々の工夫について具体的にお話しいただきました。
校内模試は「英語I」「英語Ⅱ」「英語Ⅲ」の3分冊になっています(ここでの「英語Ⅰ」などは、科目名とは無関係)。東京大学の入試問題は、内容は超難問と言うほどではないものの量がとても多いことで有名です。そのような問題をどのように攻略していくのか。まず参加された先生方が実際に校内模試を解いてみて、そしてその問題に対応できる力を付けさせるために指導すべきことを考えてみました。
当日使われた冊子は「英語Ⅰ」で、大問は、①100字要約、②段落整序、③リスニングでした。「この問題に対応できる力を付けるには、日常の授業でどういった指導が必要か」という視点で校内模試に取り組みました。受験生の目で解くのではなく、指導する立場から問題を分析し、必要な指導法を考えます。問題を解いた後に、4, 5名のグループでお互いの意見を交換し、それを基に、全体で意見発表を行いました。例を挙げてみます。
◆100字要約問題についての参加された方からのご意見 発表された先生のご意見は「勤務校では色々な学力レベルの生徒がおり、生徒の日本語の学力にも差がある。多くの生徒が日本語を理解する力が弱いため、英語の前に日本語の文章の内容を読み取ることができない生徒も多い。そのため『日本語の文章の要約』という演習を英語の要約問題演習と並行して行うのも良いと思う。ただし、その時間を確保するのは難しいので、家庭学習に取り入れ、授業の中では英語で、家庭学習では日本語で演習をさせてみてはどうか。」というご意見でした。
久保野先生からは「とばし読みのような速読は必要ありません。大切なのは、英語の語順に従って、word by word, line by lineに分速100語程度で素早く正確に読んで理解する能力を育てることです。母語(日本語)の読解速度を上げていくことが、英語を読む速度の向上にもつながると思います。」というコメントがありました。
◆久保野先生の指導法 それでは実際に久保野先生はどのように指導されていたのでしょうか。その指導法について解説していただきました。
「要約問題は格好を付けて長い文を書いてはいけない。簡潔にポイントをつくこと。やみくもに書き連ねて、設定字数が来たら終わり、という書き方は論外。」と言い切り、最初にポイントの箇条書きを作成する必要性を強調されていたそうです。
リスニング指導は「テストと答え合わせ」に終始しがちです。聞けなかった個所が聞けるようになるために、学習方法を提示して授業中に体験させます。ただし、自分なりにやり方を見つけている生徒には特に強要はしなかったそうです。自分に合った学習方法かどうかは、生徒自身に 判断させるようにしたそうです。
東大入試の「レクチャー型」の問題の場合、推奨の手順は次のようなものです。
最後に実際にされていた音読指導の内容をご紹介いただきました。
◆ハノン方式 定着させるための音読。やり方は以下の通り。授業で教科書のLesson 1を学んだ場合、
◆虫食い音読 この音読方法は、空所のあるテキストを音読する者です。久保野先生ご自身が勉強のために行っていた学習方法から考えついたそうです。鉛筆は持たず、空所に書き込みはさせません。瞬間的に判断して音声化する必要があるため、スピーキング力の育成につながるそうです。空所を色々とバリエーション持たせることで、弱点を補強して発信力を鍛えていきます。
今回の講義では、入試のシミュレーションである模試を実際に解いて、この問題に対応するために生徒に必要な力は何なのか、そしてその力を付けさせるための指導法や授業での取り組みを考えていただき、必要となる指導についてお話し頂きました。受験を入口とし、そこから逆算する形で「日常の授業をいかに改善するか」について、お話し頂きました。
「特別な受験対策をしなくても、授業で力を付けていけばコミュニケーション能力育成と受験は両立できる」と久保野先生はおっしゃいます。そのお言葉の通り、模試の作成から、力を付けさせるための授業法・指導法までアイデア満載で、大変参考になるお話しでした。久保野先生どうもありがとうございました。ご参加された先生にも様々なアイデア・工夫を参考にしていただき、今後の授業にお役立ていただきたいと思います。
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最終更新日: 2010年6月18日(金) 09:17 JST; 603 閲覧件数