12月6日に常葉学園中学・高等学校にて開催されました「英語教育の達人セミナー」に参加いたしました。その模様をレポートいたします。
「英語教育・達人セミナー(通称達セミ)」は東京都立戸山高等学校の谷口幸夫先生が主宰されているセミナーです。静岡では毎年この時期に開催されており、今年で10年目。毎回たくさんの先生方が参加されています。今回も50名以上の先生、そして将来教員を目指している常葉学園大学の学生さんがたくさん参加されていました。
第一部は主宰者の谷口先生の講演です。先生が授業で実際に行っている活動をご紹介していただきました。
まずはウォームアップ活動。全員立たせ、1から20までの数字を言えた人から着席させたり、チャンツに乗せて’’Do you have a dream?’’ ‘’Yes,I do.I have a dream for the future.’’といった文をリズムよく音読します。数字もただ数えるだけでなく、奇数、偶数、序数、倍数、など色々な条件が出されるため、丸覚えではなく、考えながら英語を思い出す練習になります。このような活動を通して教室全体を英語ムードへ切り替えていくそうです。
頭も切り替わったところで、『キクタンリーディング』(アルク刊)を使った音読活動に入ります。まずチャンツに乗せて単語を発音し、そして本文を音読、最後にサイトトランスレーションをします。サイトトランスレーションは「語順を意識した音読活動」として行っているそうです。スラッシュで区切られたチャンクごとの日本語訳と、それに該当する英語を読み上げることにより、英語と日本語の語順の違いに気づき、意識するようになるそうです。毎月、単語の100題テストを行われているそうですが、サイトトランスレーションをするようになってから、テストの平均点が10点くらい上がったといいます。
最後に「ワード・カウンター」という活動をご紹介いただきました。これは毎授業行っている1分間スピーチの中で行っている活動で、ペアになり、提示されたトピックについて1人がスピーチをし、もう1人が語数をカウントします。発話力を鍛えるためにこの活動を始めたところ、最初は10語程しか話せなかった生徒も、回数を重ねていくにつれてだんだんと話す語数が増えていったといいます。次回のトピックを前の授業で提示しておくと、そのトピックから思いつくことをマッピングし、スピーチの準備をしてくる生徒もたくさんいるそうです。 この活動の成果が成績にも現れているそうで、1分間に話す語数が増えるほど成績も上がっているそうです。発話力を鍛え、またリスニングの力も付き、英語全体の能力を伸ばすことができる大変効果的な活動であると先生はおっしゃっていました。
第二部は会場校である常葉学園中学・高等学校の木宮暁子先生による講演です。高2の授業で行っている活動のいくつかをご紹介していただきました。
英語を身につけるためにどうのように勉強をしていけばよいのか。まず英語学習の全体の流れを把握することが大切だと考え、英語を身につけるために必要な要素と、学習の流れを図式化し、それを常に意識しながら勉強するよう指導されているそうです。 その図とは、英語学習の過程を水道の蛇口から水を流れていく様子に見立てたもの。
①核となるG(grammar)は水をためるタンクの役割。タンクに水をたくさん貯めるために、中学英語をきちんと身につけておくことが必要。 ②GのタンクからR(reading)とL(listening)というコップへ水が流れます。Rの力を付けるために、辞書を引かなくても分かるような易しい文章をたくさん読んで(多読)、Lの力は文章を音読して鍛えていく。そうやって力を付けていくと、RとLのコップからが溢れてきます。 ③その水がW(writing)とS(speaking)の桶に水が流れていく。Wは日記を書くことで、SはOCの授業を積極的に受けて話す機会を増やすことで力を付ける。RとLをたくさんやった後だからこそ、WとSの力が付く。「わかる英語」から実際に「使える英語」になっていく。 ④そしてどんな活動でも大事なことはT(thinking)の力。単なる丸暗記はダメ。きちんと考えて使わなければ結局頭に残らない。 ⑤同じく大切なのが、V(vocabulary)の力。「英語の力は単語の力、単語の力は英語の力」。 これは木宮先生が高校時代に恩師の先生から言われた言葉だそうで、いつも生徒に言っているそうです。
この流れを生徒に説明し、英語学習の流れの全体像を知った上で上手に英語の勉強を進めていけるようにアドバイスされているとのこと。そのためにこの図を印刷したものをラミネート加工して生徒に常に持たせているそうです。
「英語学習成否の鍵を握る3つの文法事項」は何か。それは「品詞・語順・文型(後置修飾)」だと先生はおっしゃっています。この文法事項をきちんと理解することが、英語学習においては必須です。これを生徒に理解させるために、視覚的なルールを決めて覚えさせているそうです。 例えば語順については、主語や動詞に「S」や「V」という記号を付けるのではなく、線を引くことによって分類をする工夫をされています。例えば、主語は一本線「-」、動詞は二本線「=」で表します。英語表現に多い後置修飾については、名詞句・節については[ ]、形容詞句・節は( )で表します。これを続けていくことによりルールが定着し、線を見るだけで働きを意識するようになるため、先生方の解説も文字を書くことなく簡潔にできるという利点もあるそうです。 このように文法事項ごとに視覚的なルールを決めて、わかりやすく表にしたものが「Reading Skill 上達基本シート」。ラミネート加工したものを黒板に張っておいて、常に意識させるようにしているそうです。
W(writing)の力を付けるための活動として、先生は英語で日記を書く活動を行っているそうです。以前、夏休みに日記を書かせる課題を与えたところ、提出された日記は、語順はめちゃくちゃ、時制もなっていない、文法事項をうまく取り入れることもできていないものばかりで、学習したことが全く定着していないことがわかり、がく然としたそうです。そこで、まず3文(事実・出来事・つぶやきなど)を書かせることから始めたそうです。 最初は高校生が日記を書いてくれるだろうかという不安もあったそうです。最初はその日の出来事を淡々と書くだけだったものが、書き続けていくと、書くことや表現することが好きになって、自分の気持ちをストレートに書いてくるようになってきたといいます。気持ちが日記に表れてくるので、日記を通して生徒と会話しているのが分かり、生徒と1対1で向き合う貴重な時間とのことでした。 日記活動を始めて5年。自分も生徒の気持ちを理解しようと、一緒に日記を書き始め、日記帳はもう5冊目に入っているそうです。自ら日記を書くことで生徒の気持ちを理解し、また自分の英語の勉強になり、生徒の日記へのコメント(英語)を書くのも速くなって、ライティング力が付いたことを実感しているそうです。しかも実際に書いたことが自然に口をついて出てくることがよくあるそうで、書くという作業で確実にスピーキングの力も伸びるとおっしゃっています。 日記は「わかる英語」を「使える英語」に変えていく活動の1つだと先生は考えていらっしゃいます。先生のご発表は、その理念がよく分かり、成果を出されていることも深く納得させられるものでした。
第三部の講師は『5STEPアクティブ・リーディング』(アルク刊)の著者である順天中学高等学校の和田玲先生。今回は『5STEPアクティブ・リーディング』の英文を題材に、高1、2生を対象に普段行っている授業を紹介してくださいました。
まずは単語の導入。1人が黒板に書いてある単語(新出単語に関連のある単語。あえて面白い単語も混ぜてある)の定義を英語で説明して、もう1人が当てるクイズをします。その後に新出単語をCDのチャンツに合わせて発音します。そして、新出単語の一覧を見ながら、グループ単位で本文の内容の「予想立て」を話します。
単語から本文の内容を予想し、本文への興味を持たせてからリスニングに入ります。興味を持って聞くため、内容を理解しようと集中して聞きます。また本文の内容についての設問を与え、答えを探しながら聴かせるようにします。
STEP I、IIで本文への興味を喚起させた後、やっと本文が渡されます。すると本文の内容の確認や設問の答えを探すのに必死になって読むそうです。本文を3回くらい読んで内容をきちんと理解した後に、本文の音読をします。 ただ音読するだけではなく、ペアになってフレーズごと読んだり、速さを競わせたり、気持ちを込めて身振り手振りを加えながら読ませたりと色々な方法で読ませます。通常の授業でも10回以上は読ませているそうです。繰り返し音読した後に、再度CDの音声を聞きます。そうすると最初聞いたときよりもゆっくりと聞こえ、はっきり聞き取れるので会場の先生方も驚いていました。
ターゲットセンテンスを暗唱させるために、先生オリジナルの「手話」や、「記号」を使っておもしろおかしく覚えます。「手話」は単語それぞれにジェスチャーをあてはめていきます。例えば、’’car’’に対しては運転している動作、’’in’’については空間の中に何かがあるイメージを動作で表現します。身振り手振りを交えると体で覚え、頭に残りやすく暗唱もしやすくなるそうです。
最後はストーリーリテリング(英語で内容を再生する活動)。本文の要約を作成するのに「あらすじピクチャー」という活動をします。 まず本文を内容の固まりごと3つに分けます。そして3コマ漫画の要領で、各内容を表す絵を書きます。それぞれの絵には小見出しを付けます。絵を書いたり、良い小見出しを付けるためには、本文を何回も読み直す必要があるため、英文に触れる機会を増やし、さらに理解度が深まるそうです。 次に英文を口頭で説明させます(スピーキング活動)。口頭練習ができた後、仕上げに制限時間内に一気に英文を書かせます(ライティング活動)。そうすると、それが要約文となり完成です。最初から「要約文を書きなさい」と指示するのではなく、生徒の興味を誘うアクティビティーのなかで要約文を完成させます。
和田先生の授業では4技能をフルに使ったアクティブな授業が展開されました。先生オリジナルの活動が盛りだくさんで、参加者の先生方も意欲的に参加されていました。2時間があっという間感じるとても有意義な授業でした。
今回も大変内容の濃い、素晴らしいセミナーでした。当日、セミナーで発表された先生方、そして、参加された先生方、学生の皆さんお疲れ様でした。これからも、ますます熱い「達人セミナー」を、楽しみにしています。
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最終更新日: 2010年3月18日(木) 14:14 JST; 1,432 閲覧件数