アルク高校教材編集部レポートVol.28 ~英語教育・達人セミナー 参加報告~

アルク高校教材編集部レポートVol.28
~英語教育・達人セミナー 参加報告~

このコーナーでは、アルク高校教材編集部が拝見したユニークな英語授業の取り組みや、参加したセミナー・学会の概要を紹介いたします。

今回は、この夏に全国各地で行われている「英語教育・達人セミナー(通称:達セミ) 2009 夏バージョン」の九州シリーズにお邪魔させていただきました。鹿児島(8月1日)、宮崎(8月2日)の2会場に参加し、先生方の実践を拝見することができました。ここでは宮崎西高等学校で非常勤講師をされている永野雅代先生のセミナーをレポートいたします。

永野先生はカナダの大学で約6年間 ESL の指導をされた経験があり、アジア、南米、ヨーロッパや中東など世界各地から来た方々を相手に英語を教えられていたそうです。宮崎県出身で、今年の春に故郷に戻られたばかり。普段のお話の中でも英語がどんどん出てくるほどの英語の達人です。

カナダ時代の生徒の中には、母国で全く英語教育を受けた経験が無く、アルファベットから教えなくてはいけない方もいたとか。そのような生徒にも最終的にはネイティブの大学生と同じレベルの英語力をつけさせなければならない。そんな環境で培われた多読とライティングの指導法についてご解説いただきました。今回はライティングの部分にフォーカスしてご報告いたします。

発信力を育てる英語指導

セミナーのタイトルは "How to Write a Good Topic Sentence"。段落の要旨を表す Topic Sentence は論説文の読解の際に着目されることが多いものの、それを書くのはかなりレベルの高い課題のように感じられます。英語が得意な生徒ばかりではない中、永野先生はなぜ Topic Sentence の書き方を採り入れられているのでしょうか。

先生は新指導要領や専門家の方々の意見を引用され、まとまりのある文章を書けるようになること、人とコミュニケーションできる能力を習得することの必要性を強調されました。実際に国立大学二次試験などのライティング問題でも、文法を正確に用いて意見を論理的に述べる力、物事を正しく説明する力が必要とされていることを指摘。さらに、問題によって求められる文章の種類も異なり、Descriptive Paragraph(説明)、Opinion Paragraph(意見)、Comparison/Contrast Paragraph(比較・対比)などの種類を見分け、それぞれに適した文章を書くことが大切なのだそうです。

また、日本語が他言語に比べて英語がより明確な論理展開を持つことにも触れ、英語で明解な文章を書くことの意義を力説されました。そして、論理的でまとまりのある文章を書くためには Topic Sentence の効果的な書き方が不可欠なのだといいます。

まずは文章の基本型を学ぶ

Topic Sentence の前に、文章を書くためにまず必要なのは、学術的な文章の基本型を知ること。まずは1パラグラフからなる評論文をサンプルに、Title(タイトル)、Margin(余白)、Topic Sentence(主題文)、Body(本文)、Concluding Sentence(結論)といったパラグラフの体裁について学習します。

内容面では Outline(大要)を構成する Topic Sentence(主題文)、Support(裏付け)と Example(具体例)、Concluding Sentence(結論)から構成される枠組みを学習します。

複数のパラグラフからなる Essay(評論)になると、Introduction、Body、Conclusion という大きなセクションに分かれ、「Introduction では一般的な話題からトピックを絞っていくように展開し、効果的な Thesis Statement を入れる」「Body の Paragraph に Concluding Sentence を書くかどうかは Paragraph の長さや次の Paragraph へのフックのさせ方によって決める」など、各セクションにおける段落の作り方もより複雑で具体的になっていきます。

Topic と Controlling Idea が Topic Sentence を決定づける

Topic Sentence は読者の関心を引き読ませるための最も重要な文であり、文章全体の読みやすさやおもしろさを決定づける要素。そこで重要になるのが Topic Sentence に含まれる topic と controlling idea という要素です。topic は文字通り主題を示し、controlling idea とはその主題について何が語られるのかを示すと同時に、筆者の意見を含みます。永野先生はこの topic と controlling idea を体得するためのさまざまな課題をご紹介されました。

まずは良い Topic Sentence を判断するところから。例えば、以下の2文のうち、どちらがより良い Topic Sentence といえるでしょうか。

a. A college degree is important.
b. Having a college degree has many positive effects on a person's life.

正解はb。aは内容的に正しいとしても漠然としすぎているため、Topic Sentence としてはふさわしくありません。一方bは、これから語られる内容を示唆し、かつ positive という見解が含まれています。a college degree が topic、has many positive effects ... が controlling idea にあたります。

次に、文のどこが topic で、どこが controlling idea であるかを分析していきます。以下の文の topic と controlling idea を探してみましょう。

Electric dictionaries are becoming more popular than paper dictionaries.

正解は、topic が Electric dictionaries、controlling idea が are becoming more popular ... です。

次に、提示された Topic Sentence に対して疑問詞で始まる疑問文を考えていきます。次のように話題を提示されたら、どんな疑問が考えられるでしょうか。

My summer vacation in Cancun, Mexico was very relaxing.

この文だけで "What did you do?" "What did you see?" など、いくつもの疑問が生まれてきます。疑問を誘うということは、この Topic Sentence がそれだけ話題を広げる可能性を持っていること。読み手の側から考えていくことで、topic と controlling idea の役割がより明確になっていきます。

さらにここから、Topic Sentence だけが空白になった文章を読んで Topic Sentence を書く課題や、個条書きに列挙された topic と controlling ideas から Topic Sentence を作り上げていく課題へと発展していくそうです。こういった課題を通して魅力的な Topic Sentence を書く技術が身に付くと、文章全体がまとまりのあるものになっていきます。

パラグラフの要である Topic Sentence がうまく作れるようになったら、段落の Body の展開のさせ方を学びます。そして、さまざまなライティングの種類に応じた Supporting Sentences を作れるように練習します。次に、Concluding Sentence の作り方を学びます。最終的に、よい Topic Sentence から始まる、論理的に首尾一貫したパラグラフを書けるように、何度もいろいろな種類のパラグラフを書いていきます。

最後に、このような過程を経て書かれた生徒の文章をどのように評価されているのかについて伺いました。基本的には Organization(構成)、Content(内容)、Grammar / mechanics(文法 / 構文)という3項目で評価し、「今回は何を学んでほしいのか」といった目的に応じてさらに細かい項目に沿った評価をされるのだそうです。このような指導を経て、アルファベットさえままならなかった生徒でさえも、最後にはA4の用紙が埋まるくらいの文章を書くことができるようになるといいます。

ライティングをリーディングに生かす

永野先生は、パラグラフやエッセイの書き方を学び、書き言葉としてのコミュニケーション能力を学んだら、それをリーディングに生かしていきます。リーディングをライティングに生かすという発想はあってもその逆は珍しいアプローチであるように思えますが、良い文章には良い Topic Sentence がある、ということに着目すれば、ごく自然なことなのだといいます。Topic Sentence の機能を書き手として理解できていれば、書き手が Topic Sentence 内の controlling idea を段落でどのように発展させていくかが読み手としても理解できるようになるのです。

「小説は登場人物の気持ちもわかるし読みやすいけど、論説は何を言っているのかわからなくなって読めない」という生徒も、こういった英文の作法を身に付ければ簡単に論説が読めるようになるといいます。セミナーの最後には、高校の模擬試験を例に挙げ、長文読解問題で出会う英文も基本型通りに論が進んでいること、Body の各パラグラフで Topic Sentence が機能していることなどを解説されました。

本物の英語を教えるために

予定されていたセミナーの時間はあっという間に終了。盛りだくさんでありながら、「まだまだ聞いていたい」と感じさせる2時間でした。文章の書き方のためにここまで合理的で体系的な指導が用意されていることを肌で感じられる機会はなかなかありません。カナダに渡った理由を「日本の生徒にオーセンティックな英語を教えたかった」と語る永野先生。そのお言葉通り、これからの日本でのご指導で活躍されることを願っております。永野先生、どうもありがとうございました。


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