英語の先生応援団 高校の英語の先生を応援します!    

2010年9月 5日(日) 04:33 JST

アルク高校教材編集部レポートVol.41
~第6回 英語の先生応援セミナー 英文法に磨きをかけ、読解力・発信力の向上にどう役立てるか~

このコーナーでは、アルク高校教材編集部が拝見したユニークな英語授業の取り組みや、参加したセミナー・学会の概要を紹介いたします。

去る6月20日(日)、「第6回英語の先生応援セミナー」が開催されました。今回のテーマは「英文法に磨きをかけ、読解力・発信力の向上にどう役立てるか」。いかにして生徒の興味を持続させながら文法を教えていくか、またそれを実際の英語力にどう昇華させるか。英語の先生方の多くが関心を抱いているこのテーマについて、5人の先生方が講演されました。  今回のセミナーも全国から中学・高校の先生、塾の先生、教員志望の方にご参加いただき、会場は朝から熱気に包まれました。

第1部 「英語の基本語力と文法力を鍛える」 田中茂範先生

 セミナー第1部は田中茂範先生(慶應義塾大学環境情報部・大学院政策メディア研究科教授)により「英語の基本語力と文法力を鍛える」というテーマでお話いただきました。長年JICA(国際協力機構)でも語学指導をされてきた田中先生。英語圏以外のスタッフ同士が英語でコミュニケーションを行う場面を見て、「英語能力とは個人の置かれた状況で機能的に英語を使う力であり、language resources (英語のコマ)とtask handling(英語使用)の双方に注目する必要がある」ということを発見されました。そこから、language resources においては、基本的な動詞「have、get、put」(これらを「基本語」といいます)を「使い分けつつ、使い切る力」がコミュニケーション能力の一要素として要求されるのだと強調されていました。

1つの「基本語」が持つ複数の「意味」より、その基本語が持つ「コア」のイメージを押さえると、「英語表現の意味」を直感的に感じ取ることができるようになる。そのような語彙学習の延長線上に文法(Lexical Grammar)があるのだと解説されていました。実例として「have」や「get」の例を挙げ、この2つのコアイメージを図解。「現在完了」や「使役」をイメージとしてどうとらえるかなど、論理的な説明をしてくださいました。

 講演の終盤では、田中先生が協力・運営されている英語学習ポータルサイト「ココネ(http://www.cocone.jp/)」を紹介されました。実際にサイトの内容を画面で説明していただいたのですが、チャットができたり、ゲームができたりと内容は盛りだくさんで、参加者の皆さんも興味深く耳を傾けている様子でした。


第2部 「新しい英文法の授業をめざして」 水口俊介先生

 お昼をはさんで第2部は水口俊介先生(日本大学高等学校・中学校)の講義で、テーマは「新しい英文法の授業をめざして」です。冒頭は学術的な側面から先生のお考えになっている、より良い文法の獲得経路の解説があり、それから始まったのがその「実践編」。先生自ら模擬授業(先生曰く「一人授業」)を実施して、どのように文法事項を生徒に導入し、気付きを与え、定着させるかという例を実際に見せてくださいました。

 この授業スタイルの特徴は「共通の文法項目に対して5分おきに違うアクティビティを行っていく」こと。先生はこの5分間の小さなユニットの学習を、大きな扉(文法)を開くための「鍵穴」と考えていらっしゃるそうです。

 水口先生は、時にユーモアを交えて会場の爆笑を取りながら(「生徒の反応」役までご自身で担当するという離れ技!)、テンポよく授業が行われました。スピーディーなのにとても解りやすい授業にどんどん引き込まれ、会場が先生の一挙手一投足に釘付けになっていました。センテンスを一語一語切ってリピートさせる「一語(イチゴ)読み」、センテンス単位で読ませる「一気(イッキ)読み」、配布プリントの「文法確認ちゃん」と「英作君と文子さん」など、ネーミングセンスもユニーク。セミナー後の参加者アンケートにも「水口先生の授業が楽しかった!」という声が多数寄せられました。まさに目から鱗の「新しい英文法の授業」を目撃したひと時でした。


第3部 「わかる、できる!を実感できる英文法の授業を目指して」 前田浩之先生

 第3部は前田浩之先生(福島県立磐城高等学校)による「わかる、できる!を実感できる英文法の授業を目指して」。前田先生は実際の授業例の一部を披露しつつ、ペアワークを交えてみんなで考えていくスタイルでお話を進められました。先生の指導のポイントは「発問」と「変化のある繰り返し」。この2つにより授業にリズムを持たせ、生徒に「気付き」を与えることができるそうです。その一環として「物事をまず覚えさせるときはまずは2択か3択で答えさせる」ということを強調されていました。これは「局面の限定」と呼ばれる方式で、たとえば「“重い石”形容詞はどっち?はい!」のようにコールアンドレスポンスを何回も行いテンポ良く生徒を追い込むことで、生徒の気付きを促していくやり方です。

 また文法を定着させる効果的な方法としてスラッシュリーディングを推奨されていました。「スラッシュで区切りを入れながら読み、前の句に対して“突っ込み”(何を?なぜ?どこで? など)を入れる」ことで、形容詞句や副詞句などの役割を自然に体得でき、ひいては句や節の語順の概念が定着するとのことでした。

 最後に知識を整理するための「マッピング」の紹介がありました。SVC文型を4つのタイプ(「なる系」「見える・思える系」「まま系」「感じる系」)に分けて図解したプリントなどが配られ、参加の皆さんも興味津々の様子でした。


「『ユメタン』を使用した授業事例のご紹介」 加藤仁恵先生

 加藤仁恵先生(足立学園中学校・高等学校)より『ユメタン』を使用した授業事例の紹介してくださいました。冒頭では加藤先生が担当するクラスの『ユメタン』を使った実際の授業風景のビデオが流され、現場の雰囲気を感じることができました。『ユメタン』を導入してからの生徒の単語テストの成績表も時系列ごとに見せていただき、どの生徒も明らかに点数が上がっているのにびっくり。『ユメタン』の効果を知る良い機会になりました。

 加藤先生曰く、最初は英語の勉強を嫌がっていた生徒たちも、『ユメタン』やそれにともなうテストを授業に導入してから、次第に自主的に勉強する態度が芽生え始めたとのこと。家で『ユメタン』をやる生徒も増えてきたそうです。最後は生徒たちが使いこんでボロボロになった『ユメタン』の画像を見せていただきました。


第4部 「授業における単語指導と、発信力を鍛える文法指導」 木村達哉先生

 最後は木村達哉先生(灘中学・高等学校教諭)より「授業における単語指導と、発信力を鍛える文法指導」というテーマでお話しいただきました。前日、先生が監督する灘中学校野球部が、練習試合で「12対0」の圧勝を収めたとのことで、いつもに増して「キムタツ節」に磨きがかかっていました。

 木村先生は生徒に語彙を定着させるために数々の失敗をされ試行錯誤する中で、「最悪、つづりが書けなくても、発音(読み)だけは出来るようになってほしい」と考えるようになり、CDを使った総合的な単語の授業を実現するため、『ユメタン』の製作を思いついたそうです。先生の現場での奮闘記に、参加者の皆さんも共感されたようで、笑ったりうなずいたりしていました。その後『ユメタン』をどのように授業で使用しているかお話しされ、具体的な文法指導法に入りました。今回は「仮定法」を例に挙げ、文法力をアップさせるための「暗唱」の重要性について詳しくお話をいただきました。

 例えば"If I were you, I would apologize to our teacher for being late."(もし僕が君だったら遅刻したことを先生に謝るのに)という例文を3分間など時間を与え、生徒にひたすら暗唱させます。その後、「じゃあ"僕が総理大臣だったら消費税をなくすのに"という文はどうなる?」と問いを投げかけます。すると生徒は仮定法の構文を使って答えます。そうすると「総理大臣の冠詞はaだっけ?theだっけ?」「消費税って英語で何ていうんだっけ?」などと新たな疑問が浮かび、自発的に調査を始めます。これが先生の言う本当の「発信力」につながるアクティビティです。これを発展させ、最終的には生徒が自ら仮定法の例文を作る(アウトプット)ように誘導していきます。生徒の自発性を促す木村先生の指導法には「生徒たちには本当の英語力を身につけてほしい」という強い意志が感じられました。

 実際の授業例を披露する中で、参加者の皆さんに3分間の「暗唱タイム」が課される一幕も。長丁場だったこの日のセミナーの最後となる活動でしたが、皆さん疲労を一旦忘れて暗唱、会場内に大きく活気ある声が響き渡りました。  最後に、これからも英語教師の輪を広げて行きましょう、という主旨のお話があり、この日のセミナーは終了しました。



 このセミナーの先生方のお話の中で共通していたのはやはり「インテイク→アウトプット」の段階の重要性でした。この段階でどのようなエクササイズをするのかが文法授業の肝なのだなあと改めて感じました。  文法といえば長々とした説明や板書、分厚い参考書、というイメージを持っていましたが、今回、先生方のお話を聞いて「生徒の自発的な気付きや、アウトプット」が文法にとっていかに重要か、そして英語によるコミュニケーションと英文法の密接な関係が解りました。

 また、生徒が苦手意識を持ちがちの「文法の勉強」はやり方次第で「英語力そのもの」を向上させる最良のツールになり得るのではと思いました。

 セミナー後は会場近くの居酒屋で懇親会が開かれ、総勢45名(セミナー参加者のほぼ半数)の先生が参加され、お酒を酌み交わしながら、活発な意見交換が行われました。

 地方や学校の垣根を乗り越え、先生たちが連帯していく。「2年前はこんなセミナーや飲み会は考えられなかった」と、木村先生。締めのスピーチの中、感極まる一面もありました。

 参加者みんなで英語教育への熱意を再確認した笑いあり涙ありの充実したセミナーでした。参加者の皆さま大変お疲れさまでした。そしてお話しいただいた講師の先生方、どうもありがとうございました。


他のレポートを読む

最終更新日: 2010年7月20日(火) 10:54 JST; 661 閲覧件数 印刷用画面